ひたむき♪~中日新聞♪虹より~

どんぐり♪

2013年08月06日 12:39




県内有数の進学校だが、野球部は強豪とは言い難い。私立滝高校(愛知県江南市)で野球部の監督を務める後藤文彦さん(50)は20年間、受験勉強と野球に打ち込む生徒たちのひたむきさに支えられてきた。

夏の甲子園の予選となる全国高校野球選手権愛知大会。滝高校は13日の初戦を10-0で勝った。
この大会で3年ぶりの1勝。ナインの目には涙があった。
「3年生にとって夏の大会で初の白星。やっと勝たせてあげられた」。
試合中は険しい表情の後藤さんも思わず目尻を下げた。

東大や京大などの難関を目指して猛勉強するのは、野球部の31人も同じ。
公立より週1~2時間授業が長く、夏休みも十数日間の授業がある。科目ごとの小テストと模擬試験は頻繁だ。
勉強と部活でくたくたになり、朝早く登校して宿題をする部員もいる。

後藤さんは34年前、選手として同じユニフォームを着た。
大学卒業後、体育教諭として母校に戻り1994年、監督になった。
当時、野球部は商業科のスポーツ推薦枠の生徒が主軸。
86年91年の夏愛知大会ではベスト4に進んだ。

しかし、98年に商業科の募集が終わり、進学コースの普通科だけになると、勉強の負担はきつくなった。
そこで、放課後の練習を2時間早く切り上げ、月曜日は休みにした。
経験の浅い部員がけがをしないように、バント練習は剣道のこてを装着させる。
商業科が中心のころに比べたら、勝つことは「むずかしくなった」と思う。
それでも、「校内いち厳しい練習」との評判を覚悟で野球部に入り、勝とうと必死の生徒たちを前に「途中で辞められない」。
部長の1年半を含め、母校の指導歴は20年目に入った。

15日の愛知大会2回戦。滝ナインは人目をはばからず、再び涙を流した。
0-6の完敗。「勝っても、負けてもよく泣く。ひたむきなんです」。
最後の一球まで弱音を吐かなかった部員が、誇らしかった。c

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